【データ分析】令和7年国勢調査に見る滋賀県の現在地:草津・守山・栗東の人口増と浮き彫りになる南北格差の現実

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関西圏の中でも「住みやすい県」として長年高い評価を受けてきた滋賀県。しかし、全国を覆う人口減少の波は、ついに滋賀県全体のマクロデータにも影を落とし始めています。

総務省から発表された「令和7年(2025年)国勢調査 人口速報集計」の基礎データを紐解くと、滋賀県全体の人口は約139万2400人となり、5年前の令和2年調査と比較して約2万1000人(-1.50%)の減少となりました。ついに滋賀県も「人口減少フェーズ」に本格的に突入したと言えます。

しかし、このデータを市町村別に細かく分析していくと、滋賀県が単に衰退しているわけではないことがはっきりとわかります。そこには、全国でもトップクラスの人口増加を誇る「成長エリア」と、急激な過疎化に苦しむ「衰退エリア」という、県内における残酷なまでの二極化(南北格差)が広がっていました。

今回は、最新の国勢調査データから滋賀県内19市町のリアルな状況を読み解き、地域が直面する課題とこれからの展望について考察していきます。

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1. 滋賀県の全体像:人口減でも世帯数は増加する「単身化」の波

まずは、滋賀県全体のマクロデータと全国平均を比較してみましょう。

  • 滋賀県総人口: 139万2439人(増減率 -1.50%)
  • 滋賀県世帯数: 59万0946世帯(増減率 +3.43%)

全国の人口増減率が-2.45%であることを考えると、滋賀県の-1.50%という減少率は「かなり健闘している」と言えます。関西2府4県の中でも、減少幅の小ささでは大阪府(-0.83%)に次ぐ第2位です。

そして、人口が減っているにもかかわらず世帯数は約2万世帯(+3.43%)も増加しています。これは、県内で「一人暮らし(単身世帯)」が急増していることを意味します。高齢者の独居世帯の増加はもちろんですが、後述する草津市や大津市などに、学生や若い社会人の単身世帯が多数流入していることが、この世帯数増加の大きな要因となっています。

2. 驚異の成長エリア「湖南3市」:草津・守山・栗東の強さの秘密

今回のデータ分析において、滋賀県内で最も輝きを放っているのが「湖南エリア」にある草津市、守山市、栗東市の3市です。人口減少社会の日本において、この3市は「人口増加」という奇跡的な数値を叩き出しています。

  • 草津市: 総人口 14万8731人(人口増減率 +3.35% / 世帯増減率 +5.30%)
  • 守山市: 総人口 8万4539人(人口増減率 +1.57% / 世帯増減率 +5.22%)
  • 栗東市: 総人口 69万129人(人口増減率 +0.45% / 世帯増減率 +5.58%)

草津市に至っては、5年間で人口が約5000人も純増しています。世帯増加率も軒並み5%超えと、凄まじい勢いで人が集まっていることがわかります。なぜ、この「湖南3市」にこれほどまで人が集まるのでしょうか。

① 圧倒的な「交通利便性」と「職住近接」

最大の要因は、JR東海道本線(琵琶湖線)による京都・大阪へのアクセスの良さです。新快速に乗れば、草津から京都までは約20分、大阪まで約50分。通勤・通学のベッドタウンとして関西トップクラスの利便性を誇ります。さらに、栗東市には名神高速道路のインターチェンジがあり、物流や製造業の拠点が多く集積しています。「県外への通勤が便利でありながら、地元にも十分な働く場所がある」という職住近接のバランスが絶妙なのです。

② 再開発による「高い都市機能」と「子育て環境」

草津駅周辺は大型商業施設やタワーマンションが林立し、県内随一の都市機能を持っています。また、立命館大学びわこ・くさつキャンパス(BKC)をはじめとする教育機関も充実しており、若い世代が流入しやすい環境が整っています。守山市は「住みやすさ」に特化したまちづくりを進めており、医療費助成や子育て支援策の充実が、子育て世代(ファミリー層)の転入を強力に後押ししています。

3. 県都・大津市の底力と「周辺都市」の明暗

湖南3市が派手な成長を見せる一方で、県庁所在地である大津市や、その他の主要都市はどのような状況なのでしょうか。

  • 大津市: 総人口 34万3051人(人口増減率 -0.59% / 世帯増減率 +2.97%)
  • 野洲市: 総人口 5万13人(人口増減率 -0.99% / 世帯増減率 +5.86%)
  • 彦根市: 総人口 11万1647人(人口増減率 -1.76% / 世帯増減率 +5.00%)

大津市は、人口約34万人を抱える巨大自治体でありながら、減少率をわずか-0.59%に抑え込んでいます。大津駅や大津京駅周辺でのマンション開発が続いており、京都への通勤層を確実に取り込んでいる底力が伺えます。

また、野洲市も減少率-0.99%と健闘しています。JR野洲駅は琵琶湖線の電車の車庫があるため「始発列車」が多く設定されており、座って通勤できるメリットが人気を集めています。世帯増加率が+5.86%と非常に高く、単身者や小規模家族の流入が続いていることがわかります。

一方で、県北部の中心都市である彦根市は-1.76%の減少となりました。滋賀大学や滋賀県立大学などがあり学生の街としての機能はあるものの、京都・大阪からの距離が遠くなるにつれて、徐々に人口減の波が強くなっている傾向が見て取れます。

4. 深刻化する過疎:県北・湖西・東近江エリアの危機

そして、データが残酷なまでに示しているのが、県北部(湖北)、県西部(湖西)、そして東近江エリアの一部における「急激な過疎化」です。

  • 長浜市: 総人口 10万8085人(人口増減率 -4.88% / 世帯増減率 +1.04%)
  • 高島市: 総人口 4万3130人(人口増減率 -7.00% / 世帯増減率 -0.01%)
  • 甲良町: 総人口 5715人(人口増減率 -10.17% / 世帯増減率 -2.89%)
  • 竜王町: 総人口 1万935人(人口増減率 -7.24% / 世帯増減率 -3.63%)

長浜市は10万人都市でありながら、約5%の人口減に見舞われています。そして深刻なのが、琵琶湖の西側に位置する高島市です。人口が-7.00%と激減しているだけでなく、ついに世帯数までもが減少(-0.01%)に転じました。

さらに、甲良町(-10.17%)や竜王町(-7.24%)といった町部では、減少率が非常に大きくなっています。特に甲良町と竜王町は世帯数も大きく減少しており、空き家の増加や地域コミュニティの維持が限界に近づいていることを示しています。竜王町には大規模なアウトレットモールや自動車工場があるものの、それが「定住人口の増加」に直結していないという課題が浮き彫りになっています。

5. データから見えてくる滋賀県の3つの課題

「南部の成長」と「その他の過疎化」という明確なコントラスト。この最新データから、滋賀県が今後取り組むべき3つの大きな課題が見えてきます。

課題1:交通インフラの「琵琶湖の分断」をどう埋めるか

滋賀県の発展は、JR琵琶湖線という大動脈に完全に依存しています。この恩恵をフルに受ける湖南・湖東エリアと、JR湖西線しかなく強風による運休も多い湖西エリア(高島市など)との間には、物理的・心理的な大きな分断が存在します。自動運転バスの導入や、琵琶湖の水上交通の再評価など、マイカーに依存しない新たな県内ネットワークの構築が過疎地の孤立を防ぐ鍵となります。

課題2:人口急増エリアの「都市問題」への対応

草津市や守山市は人口増加の恩恵を受けていますが、同時に「保育所の不足」「小中学校の教室不足」「通勤・帰宅ラッシュ時の交通渋滞」といった、都市型インフラのパンクという新たな問題に直面しています。急激な人口流入に合わせた公共サービスの拡充と、住民同士の新しいコミュニティ形成のサポートを並行して進める必要があります。

課題3:「住む場所」と「働く場所」のアンマッチ解消

竜王町のように、働く場所(工場や商業施設)があっても、そこに住まずに周辺市から車で通勤するスタイルが定着しているエリアがあります。過疎地域に必要なのは単なる企業の誘致だけでなく、「そこに住みたいと思わせる環境(教育、医療、生活インフラ)」をセットで提供することです。

6. まとめ:滋賀県は「日本の縮図」である

令和7年の国勢調査速報データを分析すると、滋賀県は決して「ひとつのまとまった県」ではなく、成長と衰退がモザイク状に入り混じった複雑な地域であることがわかります。これはまさに、東京一極集中と地方消滅が進む「日本の縮図」そのものです。

草津や守山といった勝ち組エリアは、そのポテンシャルを活かして関西圏域全体を牽引する力を持っています。一方で、高島や甲良といった過疎化が進むエリアは、これまでの「成長を前提としたまちづくり」から脱却し、インフラのダウンサイジングや関係人口の創出に向けた痛みを伴う改革に踏み出す時期に来ています。

滋賀県が直面するこの「南北格差」の課題にどう向き合い、どのような持続可能なモデルを作っていくのか。次回5年後の調査までの間に、自治体と県民の真価が問われています。

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