滋賀県大津市浜大津に、2027年12月の開館を目指して「滋賀県立琵琶湖文化館(仮称:新・琵琶湖文化館)」の建設が進行中です。琵琶湖のほとりで1961年に開館し、県の文化財を展示してきた旧琵琶湖文化館が老朽化により2008年から休館している中、その役割と収蔵品を引き継ぐ新たな文化拠点として注目を集めています。この記事では、建設中の新・琵琶湖文化館の概要、特徴、そして地域や文化に与える影響について詳しく紹介します。
琵琶湖文化館の歴史と新施設の背景
滋賀県立琵琶湖文化館は、1948年に設立された滋賀県立産業文化館を前身とし、1961年に大津市打出浜の琵琶湖岸に総合博物館として開館しました。開館当初は近代美術、水族館、博物館機能を備えた複合施設でしたが、後に近代美術は滋賀県立近代美術館(現・滋賀県立美術館)、水族部門は琵琶湖博物館、考古資料は安土城考古博物館へと機能を移管。以来、仏教美術を中心とする近江の文化財の収蔵・展示に特化してきました。国宝や重要文化財の指定件数が全国第4位を誇る滋賀県の文化財を、国内外に発信する役割を担ってきたのです。
しかし、建物の老朽化やバリアフリー対応の不足、耐震性の課題などから2008年に休館。休館中も文化財の調査や貸出、地域連携企画展、文化財講座などを継続してきましたが、県民や観光客から再開を望む声が高まっていました。そこで、2021年3月に「(仮称)新・琵琶湖文化館基本計画」が策定され、大津港に隣接する浜大津に新たな施設を建設する計画が始動しました。この新施設は、旧文化館の役割を引き継ぎつつ、より現代的で多機能な文化拠点として生まれ変わることを目指しています。
建設の進捗とスケジュール

新しい琵琶湖文化館の建設は、2023年10月に事業契約が締結され、2025年2月20日に着工式が行われました。現在、建設地である大津市浜大津5丁目(大津港隣接の県有地)では、仮囲い設置や杭打ち工事が進められています。滋賀県の公式ウェブサイトでは、建設地の定点観測写真が随時更新されており、大きなクレーンが基礎杭を吊り上げる様子などが公開されています。
事業スケジュールは以下の通りです:
- 設計・建設期間:2023年10月~2027年3月
- 開館準備期間:2027年4月~2027年12月
- 開館予定:2027年12月
- 維持管理・運営期間:2027年12月~2042年3月
事業はPFI(民間資金活用)方式のBTO(Build-Transfer-Operate)方式で進められ、特別目的会社「株式会社琵琶湖C&S」(代表企業:丹青社関西支店)が事業を担当。総事業費は約108億円(運営費含む)で、設計は隈研吾建築都市設計事務所と安井建築設計事務所の共同企業体、施工は大林組・笹川組建設工事共同企業体が担っています。
新・琵琶湖文化館の特徴
新・琵琶湖文化館は、地上4階+ペントハウス1階、延べ床面積約6,610.5平方メートルの鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造)の建物です。北側外観は「琵琶湖に船出する大きな船」をモチーフに設計され、木をふんだんに使ったファサードや軒下空間が特徴的です。設計を手掛ける隈研吾氏は、滋賀県内では守山市立図書館に続き2棟目の建築となり、自然と調和したモダンなデザインが期待されています。
施設の主な構成は以下の通り:
- 1階:インフォメーションゾーン、ショップ、飲食コーナー
- 2階:事務室
- 3階:県内最大級の収蔵庫
- 4階:高さ4メートルの大型ガラスケースを備えた展示室、展望コーナー
新文化館は、従来の博物館機能に加え、以下の3つの柱を軸に運営されます:
- 近江の文化財を中心とするミュージアム:国宝や重要文化財を含む収蔵品の展示や、地域連携企画展を通じて、滋賀の歴史と文化を発信。
- 地域の文化財サポートセンター:県内の文化財の調査・保存を支援し、地域の文化財保護を強化。
- 文化観光拠点となるビジターセンター:文化財をテーマにした観光プログラムや地域の暮らしを紹介し、観光客に滋賀の魅力を案内。
特に、ビジターセンター機能は、文化財だけでなくその背景にある地域の歴史や暮らしを伝え、県内各地への周遊観光を促進する点で画期的です。例えば、展覧会を通じて仏像の魅力やその地域の風土を紹介し、観光地への訪問を促す取り組みが計画されています。
地域と文化への影響
新・琵琶湖文化館は、滋賀県の文化財保存・活用の拠点として、県民や観光客に多大な影響を与えると期待されています。滋賀県は「近江の文化財で“つなぐ”“ひらく”未来の滋賀」を基本理念に掲げ、「人と地域」「歴史と未来」「滋賀と世界」をつなぐ博物館を目指しています。この理念は、単なる文化財の展示にとどまらず、地域のアイデンティティを強化し、持続可能な地域社会を築くための基盤となるでしょう。
地域住民にとっては、身近な文化財に触れる機会が増え、滋賀の歴史や文化への誇りが深まるはずです。また、県民フォーラムや建設予定地イベントを通じて、県は積極的に情報発信や意見交換を行っており、2025年2月11日には新文化館の具体的な姿を紹介するフォーラムが開催されました。こうした取り組みは、県民の関心を高め、開館に向けた機運を醸成しています。
観光面では、大津港や京阪「びわ湖浜大津」駅に近い立地を生かし、琵琶湖観光の新たな玄関口となることが期待されます。文化財を軸にした観光プログラムは、県北部「北の近江」の仏像や湖北の奇祭など、滋賀の多様な魅力を世界に発信する機会となるでしょう。東京国立博物館の研究員を招いたフォーラムなど、県外との連携も強化されており、国内外の注目を集める可能性があります。
旧文化館の今後と課題

一方、旧琵琶湖文化館(打出浜)の建物は、2023年の改修工事で屋根が赤く塗られ、ユニークな外観が話題に。県は新文化館開館後もこの建物を活用する方針ですが、具体的な用途は未定です。歴史的価値のある建築だけに、文化的活用が望まれます。また、新文化館の運営には、地域との連携や資金面での持続可能性が課題となるでしょう。PFI方式による民間ノウハウの活用は効率化に寄与しますが、公共性と収益性のバランスが重要です。
まとめ:未来への一歩
新しい琵琶湖文化館は、滋賀県の文化財を未来につなぐだけでなく、地域の誇りを高め、観光振興にも貢献するランドマークとなるでしょう。隈研吾氏のデザインによる船を模した建物は、琵琶湖のシンボルとして多くの人々を引きつけるはずです。2027年の開館に向けて、建設の進捗や地域との連携イベントに注目しながら、近江の文化が世界に広がる瞬間を心待ちにしたいと思います。
あなたも、滋賀の歴史と文化に触れる旅の第一歩として、新・琵琶湖文化館を訪れる計画を立ててみませんか? 公式ウェブサイトやX(@biwakobunkakan)で最新情報をチェックして、開館の瞬間を一緒に迎えましょう!
▼滋賀県オフィシャルサイトで公開されている新しい琵琶湖文化館の概要